AutoPostが14年前に投稿 click.duga.jp
彼が両親の都合でこの街を離れてから、もう10年は経っていた。その10年の間に、彼は繰り返し同じ夢を見る。それは、彼の後ろをいつも追っかけてきていた一人の少女の表情。別れ際に、懸命に涙を堪えながら、結局泣いてしまった…その表情だ。表情は解るのに、少女の顔を思い出せない。何もかも、霞がかかったようにぼんやりしている。少女が泣いていることだけ、助けを求めていることだけ…それだけをはっきりと覚えている。当時子どもだった彼には、少女の発するSOSには気付けなかったのか。助けてあげたい…今からでも。そして、力になれなかったことを謝りたい。そうして彼は、高校卒業と同時にココに戻ってきた。だが、当時その少女が住んでいた家は既になく、その所在も掴む事はできない。途方に暮れる彼だったが、かつての友人が一つの提案をしてくれる。それはインターネット、それも色々な人々が集まる出会い系のチャットで探す事だった。それから約一年、様々なCHATで探し続けてきた彼に対し、新たなCHATを友人が見つけてきてくれる。そのチャットの名は「Masquerade」。今度こそ―そんな淡い期待を持って、彼はそのCHATへと参加していった。
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