AutoPostが11年前に投稿 click.duga.jp
「うん、いいね。どっか行っちゃおうか?」とある日の授業中。夏と秋との境目にある10月の空をぼんやりと眺めながら、退屈な時間を過ごしていた俺、北条彰人(ほうじょうあきと)は「どこかに、逃げ出したいなぁ」なんて無責任な独り言をつぶやいていた。すると不意に届いてきたのは、先のそんな返事。ふと見れば、となりの席に座るクラスメイトがこっちを見て微笑んでいる。今まで会話をしたことも無い様な彼女からのその一言で、俺は密かに胸の中に宿していた願望を、強く自覚する。それがキッカケだったのかはわからない。でも確かに、その日から俺の日常は大きく変わる。路地裏で、誰かに追われている不思議な女の子と出会い。道端では、見知らぬ外国人から突然好意を寄せられ。通りがかった旅の途中のお嬢様とは、勢いで友達になり。そんな様子がおかしい俺へと、妹は必要以上に警戒しはじめて。そして声をかけてきた、となりの席に座るクラスメイトとは『逃避行ゲーム』なんて名前をつけた妄想ゲームで、日々の退屈な時間を紛らわせることになる。でも、俺の胸の中に眠る密かな願望は消えない。いつか俺は、この退屈な日常をかなぐり捨て、大切な誰かの手を引き、共にどこか遠くへと逃げ出してしまうのだろうか。
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