AutoPostが12年前に投稿 click.duga.jp
神は漆黒の空に、太陽と月を生み出した。眩い太陽は祝福され、多くの命と共に生活を始める。対して、仄暗い闇の中、月は孤独のまま。やがて月は、深い悲しみと寂しさのあまり、涙を流した。白銀の雫を。月の涙の美しさに心を奪われた神は、それを拾いあげると命を与え、自らの遣いとした。故に月の涙から生まれた彼らは、太陽の黄金の光ではなく、月の純白の光で出来ているという──とある夜、僕らが育った孤児院の院長先生に呼び出され、貴族であり名士として住人達から敬意を払われているが、街から離れた場所へ屋敷を構え、人目から隠れるように住んでいる変わり者といわれているセモン様の屋敷に使用人としてお仕えすることを言い渡された。早速翌朝、僕は孤児院で妹のように一緒に育った女の子・ナナと人里離れた豪華で、広い屋敷へと赴くことになる。「私が当家の主人のセモンです。ようこそ、ユウ。これからしっかり働いてください」変わり者の主人・セモンさん。その使用人である偏屈な老人・レムさん。そして、僕やナナと同じく孤児院で育ったシア姉。彼らから快く迎えられた僕は、小さな部屋を与えられ、新しい生活をはじめることになった。ある晩、僕は屋敷に地下室があることを知る。鍵も偶然に──皆が“近寄るな”と言う地下室。けれども、どうしても好奇心に抗えなかった僕は、皆が寝静まった夜、鍵を片手に部屋を出た。暗い地下室のその奥に、重たそうな扉が一つ。その扉の奥には──人形のような──アルビノの少女。例えるなら、夜空を照らす淡い月の光のように冷たく、優しく、白い存在に。
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